最近は、すっかりご無沙汰・・・。
私はピアノ。この家に来てから、もう10年になります。
大きな会場で開かれていたピアノの展示会。まだ小さかった娘さんを連れ、家族三人で遊びに来てくれました。
そこで、私を見つけてくれたのは奥さま。一度、私の前を通りすぎてから戻ってきてくださり、そっと私の黒い肌と白い鍵盤をなでてから、家に連れて帰ってもらうことが決まりました。
初めて家に置かれた日、奥さまが「これから、よろしくね」といって、私の体のあちこちをやさしく磨き上げてくれた感触を今でも思い出すことができます。
これまでいろんなことがありました。ときには「ちゃんと練習しなさい」と、奥さまが娘さんを私の前に座らせて、怒っていらしたこともあります。ピアノ発表会の前には、よく練習してくれて「上手になったね」と奥さまに褒められるのを私も楽しみにしていました。
娘さんが中学生になると、私の前に座ることも少なくなりました。今では忘れた頃に奥さまと娘さんがちょっと触ってくれる程度に。
すっかりご無沙汰になってしまいました。
ピアノの夢は自分で叶える
自分の小さい頃には習わせてもらえなかったピアノ。自分に娘が生まれると、かつての夢を娘に叶えさせようとピアノを習わせる人は多くいらっしゃいます。
先に書いたように、弾かれることのなくなった寂しそうなピアノがあなたの家にあるのではないですか?
夢は自分で叶えるもの!
そう、娘さんにも言い聞かせているのではありませんか?
娘といえども別の人格を持った他人であることに違いがありません。叶えたい夢があるなら他人をコントロールするよりも、自分の行動を律することのほうが簡単です。
子どもと違う大人のピアノ
ピアノで一流と言われる演奏者に育てるためには、遅くても4歳くらいまでには習い始める必要があると言われています。
これは、人間の脳が発達の段階で削ぎ落としてしまう能力と関係があります。
いわゆる絶対音感と言われる、440ヘルツの振動音を聞いた時に“ラ!”だと分かる能力のこと。この能力は5歳位までに注意して聞き分ける訓練をしていないと、不必要な能力として脳内のつながり(シナプス)が断絶してしまいます。本来は誰でも聞き分ける力を持っていたのに失ってしまう能力があるなんて残念ですね。
このことは事実としてあるのですが、ピアノは大きくなってから始めても上手くならないと誤解されているケースが多いようです。
一線級のピアノ奏者として大成することは、そもそも望んでいる人はいないでしょう。趣味で好きな曲を楽しんで弾くことができ、ときには人前で演奏することができたらそれで十分ではありませんか。
大人になってから始めるピアノは、退屈な基礎練習に多くの時間を費やす必要もありません。それよりも実践的に好きな曲を楽しく練習するほうが最終的には上達が速くなります。